帰る (散文詩にしてみました 4)/AB(なかほど)
 
車が来る
のを。洗足池の水面に、信号のない横断歩道
に、君が乗っている電車に、僕が立ち上がっ
たホームに、雨が落ちて来るのを。君は電車
の椅子に座って足をぶらぶら。
でんしゃ
でんしゃ
えほんのとおりに
ガタン ゴトン
おうたのとおりに
ガタン ゴトン
君を思い出すために、僕も足をぶらぶらさせ
てみる。もう少しで降ってきそうだから、も
う少しぶらぶら。もう降らないのかもしれな
い。もう降っているのかもしれない。



東京出張の際にはいつも、千鳥町の駅近くの
旅館に素泊まりをする。「観月」という名前
は、大観が仕事宿として長逗留した折に部屋
から見えた月を
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