白んだ月/ホロウ・シカエルボク
 
取り巻いている獣の臭いがした
手にはサバイバルナイフが握られていた
眠っている俺を殺そうとして
そんなことのすべてが嫌になったのか
ふとそんなことを考えた
でもいまは
それについて考えてみる時間ではなかった
起き上がり、ナイフと上着を拝借し
伝わるかどうかはわからないが
自軍の敬礼をして敬意を表した
いいナイフだった
ついさっき
ひとりの命を奪ったとは思えないほどに光り輝いていた
立ち上がり
川下に向かって一気に駆け下りた
数匹の獣を見かけたが
戦う労力よりもすぐに食える肉を選択したらしかった
彼はあっという間に骨になるだろう

下るに従って
少しずつ水が残
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