白んだ月/ホロウ・シカエルボク
った
しばらくの間互いにじっと視線を交わしていたが
共有出来るものがなさそうだとみると
鹿は踵を返して行ってしまった
微かに数度聞こえた足跡は
ここが世界の果てだと教えていた
これからの自分を
語るための言葉を知らない
これからの自分を
動かすための燃料がわからない
それはつまり
この地で砂になるということなのかもしれない
受け入れたくなるほどに、けれど
もう一度、眠れ、と
内に潜むなにかが言った
どれだけ強欲なんだ
苦笑いしながら眠りに落ちた
目覚めるとひとりの兵士が
足元でうつ伏せに倒れていた
辺りは血に塗れていた
姿は見えないが
こちらを取り
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