白んだ月/ホロウ・シカエルボク
わからない
そもそも、どうして
こんな場所に居るのかすらまるでわからないのだ
すべての終わりが確定した時
誰も居ない場所に行こうと思った
生きている限り
結末から離れようと
だから目的地を定めることが出来なかった
なんの臭いもしない方へと
ただただ足を向けただけだった
月は高く上り、いまでは
肺病のように白くなっている
谷の上から一粒の小石が落ちてきた
そこには野生の筋肉をまとった牡鹿が居て
こちらを見下ろしていた
その目になにが映っているのかなど知る由もなかった
目の前まで降りてきてくれれば
食いものにありつけるかもしれないのにと
考えただけだった
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