光/由比良 倖
 
じられるのです。
屋上では時間がゆっくり過ぎていく。
人類が滅びたあとの午後みたいに。

懐かしい匂いのする午後をください。
薄明かりに照らされた、永遠の隠れ家をください。
私と地球は親子です。一度も言葉に取り憑かれたことのない、
白いミルクの匂い。



地球が滅びたあとの午後、病院の廃墟の屋上で、
ウォークマンに遠い、遠い空を入れて、
鳴らないギターを右手に持って、
私は小さな、小さな私の感触を、
与えられた歌の感触を、確かめている。
破れたシーツを身体に纏って。

私はもう、何も要らない。
ヘッドホンが壊れたあとの、壊れた花火。
(それにしてもあの日
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