眼鏡は明瞭 かければ 迷妄〜死人がやっぱりふらついている〜/菊西 夕座
 
               ―ハーバート・ウエストに―

いまでは はっきりと 聞こえる 書物の なかの 足音を
それは まさしく 死の 忍び足 
音なく しかし だからこそ 歴然と
ページを めくる 所作は 墓を あばく 愚行に かさなり
行から 行へと 掘れば 掘るほど
いやます 混迷 ふかまる 紊乱

「医がくせいは 夜ふけに 眼鏡を おいた
窓辺の 眼鏡と 満月が たがいを 照らした
いまや かけていた ものが 欠けた
おいた はずの 眼鏡を また かけていた
医がくせいは 書けていた たしかに ことわりを
かけていた ものは 老いて 欠けた
空に かけてい
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