往診の思い出/板谷みきょう
 
向かって
「やかましいわっ!!」と
デスクの男性が怒鳴り
再び柔和な声で医師とボクに向かって
「それじゃあ、お願いします。」

部屋に入ると暴れる男一人に
複数の屈強な男たちが怒鳴り合い
馬乗りになったり
手足を其々に抑え付けている
ボクは、すっかりビビっていた

「板谷君、血圧計。」
「先生、これじゃあ測定できませんが…」
「そうだね。あのぉ。ちょっと、抑えてて下さいね。」
そう言いながら
聴診器を当てようとしたが
大声を出し押さえつけられながらも
激しく身を捩りどうにもできない

「板谷君、ミダゾラム1A+生食20mL用意して。」
「腕まくってしっかり
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