陽の埋葬/田中宏輔
高校の嘱託講師から予備校の非常勤講師になってしばらくすると、下鴨から北山に引っ越した。家賃が五万七千円から二万六千円になった。ユニット・バスの代わりに、トイレと風呂が共同になった。コの字型の二階建ての木造建築で、築二十年のオンボロ・アパートである。北山大橋の袂で、しかも、ぼくの部屋は入り口に一番近い部屋だったので、数十秒で賀茂川の河川敷に行くことができた。だから、北山の河川敷を歩いてそのまま下って、発展場の葵公園まで行くことが多かった。その夜は、しかし、仕事から帰って、ふと居眠りしてしまって、気がつくと、夜中の二時になっていた。そんな時間だっ
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