偽聖母/逃げ水の男/ただのみきや
財布の中で一円玉を探すよう
出来事と記憶の乖離その広がりにひらひら裏表
言葉ばかりがなにも埋められずに偽札のようだ
バラバラになった筏の上を黒いうさぎが跳ねてゆく
挨拶を送る男たちの瞳の針が文字盤と垂直に
虚を刻むと貞操帯をつけたお針子は御旗を繕いながら
カナブンを吐き戻したその時きみらのメガネは手垢だらけだった
きみが占有しているのは自我だけだ
先っちょだけ 頭部だけのクワガタムシ
子犬のパペットと矮人の持ちつ持たれつ
釦の目鼻で論じ合うのは誰だ
きみの脚を全部もいでピカピカに磨いて
自分の顔を映して悦に浸っているのは
サインを確認しろ誰かルーペを持って来い
なま
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