偽聖母/逃げ水の男/
ただのみきや
なまぬるい手でそんなにこね回したら
怒りも悲しみも饐えて食えたもんじゃない
古い訳詩の中で花でも摘んでいるほうがましだ
女の鼻をそっとつまんでいるほうが
こうしてまた白紙を行き巡る
一本の杖を立ててここを占有しよう
一本の卒塔婆に寄り添っている
幽鬼なんているようないないような
それが好くてぼくは逃げ水を覗いている
羽化したばかりのカゲロウに囲まれながら
キスするほど 溺れるほど顔を近づけて
(2023年8月20日)
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