百鬼百景/ただのみきや
 
のまぼろし

水面の契り あれは己の影
それとも深淵から浮かび上がる母神の母音

色をともし 色を失くし
波は凪ぎ
くちびるにふれるかのよう
なまぬるい 
墓石に黄色の笑い声




若き日の情熱はわたし置いて去っていった
いくつかの詩の中にその面影をとどめたまま
かれはいつも先走り
多くのことばを試着しては脱ぎ散らかし
あらゆるイメージの楽園を無我夢中
衝動を唯一の羅針として
遊び疲れることを知らない小鬼のように

若き日の情熱にもう追いつくことはできないが
それはいまも地平線の少し向こうをさまよっている
時間と距離と地球のかたちを想え
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