浜茄子/本田憲嵩
あらたに開通された高速道路と道の駅にとって替わられたとても広いパーキングの、そのとても強い潮風にさらされた。元直売所の窓ガラスはいくつも破れはて、そこにはオニグモが何匹も巣を張りめぐらし、その赤茶けたトタン屋根はなかばくずれ落ち果てている。その地面にはおそらくはかつて無言で食べたであろう蟹の甲羅の抜け殻がその砂のうえで風に晒され風化しきっている。裏手にまわれば昆布色の海が見え、その泡だつ波音がとても力強く響き、草はぼうぼう伸び放題、曲がりくねった白い流木が無造作にいくつも放置されている。おそらくは車上生活者であろうか、その黄いろい軽自動車のほんの少しだけ開かれた窓から微かに聞こえてくるラジオの声、
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