夏の雨/soft_machine
夏 夕暮れて
逃げ水の空は
ひかりの端から
てのひらに現れる
なんてあざやかな文字盤を濡らす
鎖されて昏く
放たれて赫ぎ
ふりかえれば
くるりくるほそ長い螺旋
胸の人の絵姿にも見えて
あしたが聞こえる
それが夏
アメンボの脚のこまかな気泡が
つつみ込まれたのは 時
耳にとどく
郭公の舌が
すくすくと大きなわすれ形見を歌うのも 時
そして皿から皿へと流れおちる
水流のどこか北風にひるがえるコートの陰で
さみしさがふき飛ばされまいと見ひらいた
公園の抜け殻にひかりを集める
それが夏
次つぎ落とされる噴水の午後
いっとき凍りついて
今 が掬われ
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