陽の埋葬/田中宏輔
 
のだから、そちのなはトリスタン(悲しみの子)とよばれるがよい。」 (ペディエ編『トリスタンとイズー物語』1、佐藤輝夫訳)



   *



すると、蟻地獄は


きたないよれよれのハンカチの端をつまんでひっぱりだし、ひろげて見せた。
(ジョイス『ユリシーズ』1、テーレマコス、高松雄一訳)

たしかに、ぼくのハンカチだった。


と、思った


瞬間


ぼくの身体は


そのハンカチの真ん中にできた窪みのなかに引きずり込まれてしまった。


そして、蟻地獄に噛み砕かれると、


魂がすぐに吐き出された。


身体の方は

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