転生の樹/ただのみきや
が悪戯に誘いかける
そのまなざしにその声に
内側の扉が開いたなら
鳥の血よりも素直に
魚の涙よりも滑らに
逃げ出すといい
ひとつの白痴の石として
置かれるとよい みずからの場所
虚空の天元へ
死はふるさとではないが
その幕間は未知なるなつかしさ
咲いて乱れて心地よく
狂え 存分に 狂え
*
時間はゆれていた
雨をぬぐって
息を返して
きれいに包装された誰かのわがままが
一羽の雲雀と心臓を共にした
菖蒲が濃い
むせるほど
振り返れば凶
耳を描いて
くちびる滲ませて
途切れてゆく
指先の愛した輪郭
*
低く飛ぶ鳥
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