転生の樹/ただのみきや
ふるさとは風の中
ラジオから流れる古い歌の中
色の滲んだ一行の詩の中
グラビアモデルの下着の中
そう ふるさとはどこにもない
地平線は悲しい
どこまでいってもとどかない
地続きに見える理想との永遠の乖離
ほらあそこ
あこがれとあきらめが引き裂かれまいと手を取って
互いの血をめぐらせる
凍てつく冷気と灼熱の
土に生きる者
受け継がれた大地に自らの血の故郷を見出せばよい
家系を尊ぶ者はその血脈に
満ちては欠ける時代の船に乗る者よ
おまえは平面に縫い付けられた結び目のひとつとして
文化を故郷として血を否定せよ
だがふるさとのない者よ
万物が悪
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