誰かが遠くで笑ってる/ホロウ・シカエルボク
、まあ窃盗には違いないが、空っぽのビルの空っぽの用具室にあったものを盗んだって誰も煩いことを言いはしないはずさ、そうやって道具を使って拾っているときちんと働いている人間に見えた、不思議なもんだよね、やってることはなにも変わってないっていうのに、まあともかく、それから三十分ばかりそうして拾い続けた、ビルの影に入ったのか薄暗くなり、路面に集中しているうちにいつの間にか裏通りに潜り込んでいた、オフィス街からも外れているようだった、ふいに、後ろから誰かに押し倒され地面に倒れ込んだ、反射的に数度転がって跳ね起きたが、背後には作業服を着た男が一人転がっているだけだった、後頭部からどくどくと鮮血が溢れ出していた
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