死者の数だけ歌がある/ただのみきや
 

立ち枯れる 歌は
声を滲ませることもなく


コップから眠りがあふれている
タネはある 
タネは不明である
正体も居所も
めだかの群れが泳いでいた
仕込んだ者も不明
色も形も不明のまま
暗い玄関だ
下駄箱にはたくさんの仮面があった
犬は嗅覚で追った
めだかが泳いでいた
名前も正体も知らなくていい 
探り当てればご褒美がもらえる
そう洗脳されていた
鍵を失くした男と
めだかが泳いでいる
この鍵が何の鍵か思い出せない男が
回転ドアですれ違う
自分は外側から来て内側へはいった
二人ともそう信じている
すごい群れだめだかが泳いでいる
紙に書いた三角形の
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