照準鏡の軋む声を/ホロウ・シカエルボク
であるほど門番は笑ってくれる、きっとそういうものだ、ソファに座っていたのか、それとも冷たい床の上か―記憶が記憶でなくなる、でも俺は俺でしか居ようがない、甘いボーカルのジャズ、夢見がちな年増のような歌、煙が漂っている、もしかしたら麻薬かもしれない、正しいリズムにこだわり始めた瞬間に、あいつはカルト・ヒーローではなくなった、誰の話だ、指先が小皿に入ったピーナッツを探している、出来の悪い夢は醒めにくい、だから酒屋の主人は今日も、収入と支出の計算で忙しい、お前は試着室の中で天使に出会う、でもそいつは何も話しかけてくることはない、とっつきにくい純粋さを貼り付けてただ微笑んでいるだけなのだ、ああ、俺の天使、そ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)