生死の花束/ただのみきや
なかった
ささやかな空白
埋めつくす植物
鶸が二羽舞い降りた
姿は隠される
この景色は
すでにいつも持ち歩いている
わたしの中では古いもの
秘部を埋めつくす黄
美しい狂気
光は灰のように睫毛につもる
たわいもない風のおしゃべり
薄紅の花びらを生き物のように二階まで吹き上げる
景色が窓からこぼれてくる
毛むくじゃらの蜂がガラスをノックする
こんな朝に
わたしはシャーレでことばを菌床にして
きみの横顔を培養している
月を溶かしたやわらかなカメオ
水面に月はゆらでも溶けない
鏡像を宿す実体としての水
しなやかで強靭な肢体
覗くものを映し出す
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)