虚構の翼/ただのみきや
時は殺意で磨き上げる
沈殿し堆積しまた崩壊し
白くまだらに記憶は焦げる
防風林で見つかった変死体
誰もがことばを着せたがった
素体化した顔
見つけたのは犬の嗅覚
メガネに見るものを選ばせる人間ではなかった
すべて真実はフィクション
フィクションにふれて
渇望の原石は転がり始める
すり抜ける風の穂先のような
永遠の名無しの後を追って
踏み迷う自らの足音にこだわりながら
毛糸玉をころがして
もつれたりつかえたり
鏡をたたけば波紋
ぼかしたりにじんだり
静物の輪郭の途切れた辺り
爪をかけそこねて仔猫は落っこちる
遭難者が書き残す
──断片──
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