虚構の翼/ただのみきや
包丁で縦にまっぷたつ
eringiの断面はしろく均一
なにもない 別段
はらわたを期待したわけでもなかったが
ningenの断面が
eringiみたいなら気色が悪い
それともこんなに単純なら
痛みを知らずに生きて
痛みを知らずに死ねるだろうか
はらわたのつまった eringi
断面がしろく均一な ningen
どっちもどっち
いやなものだ
*
遠く
信号が赤に変わる
風は止まらない
陽炎の中
石に聴診器を当てている
男の亀裂に沿ってすり抜けて
駐車場は混んでいる
親子連れの声が白く反射して
視線を冷ます影を求めた
坦々と 延々と
時
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