だからもう一度、初演の舞台の中に/ホロウ・シカエルボク
 

凝固した毛細血管のような形状の幻が網膜の中で踊る午後、飛散した詩篇の一番重要な欠片で人差指の腹を切る、往生際の悪い具合で滲む血の赤は、どういうわけだか若い頃に会うことが無くなった誰かのことを思い出させた、手のひらで傷を拭うのはやめて、それはいつだって傷をより広げてしまう、冷たい水に浸して、そこだけが緩やかに死んでいくのを待っているのが本当なのに、裂傷は一番古い記憶とリンクする、奥底にしまいこんだまま、中に何が入っているのかも忘れてしまった小箱、そんなものの中に入っているガラクタのようないくつかのコード…噎せ返るような初夏の午後、飛びつかれた羽虫みたいにじっとして、ただただ時間が汗に変換されるの
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