裏庭/由比良 倖
プや、船の揺れることや。
電流のコイルの音や、亀の甲羅で占ってたことや、
言葉を初めて発した人のことや、黄色いトイカメラのこと。
煙草や薬が無ければ生きられない僕の境遇や、
昔買ったCDや、父に買ってもらって、
父が憎くなって壊した目覚まし時計のことや。
くだらないことばかりを。
しかしさて、無限の宇宙が無限に落ちていく中で、
水さえも古びていく宇宙の中で、
レコードのぱちぱち言うノイズの中で、
大地は要するに……
ダブリンの旅行ガイドを眺めながら、
ある程度は分かるなんて言わずに、
みんな分かってしまいたいのです。
(古いただの櫛を芸術だと言った人がい
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