夜と雨の幕間劇/ただのみきや
我をすっかり整えて
ネガは忘れたまま
秘密はおのずと黒い
開いたドアから見える裸の中で
目隠しをされた暗喩があえいでいる
まつわる息のようなもので
行間は埋めつくされてゆく
強靭な無力感を噛み続けても飲みこめず
胆汁ばかりが反芻される
つかみどころのない季節だった
誰かの乾いた叙情が風に吹かれて転がっていった
自転車をこぐ娘たちの白い脛を目で追いながら
消えてゆく煙を手繰るような真似をして
目覚めたばかりの耳を食む
昨夜の夢が溶けた水で
女は蛇になり蛇は魚になる
ペン先みたいに脳がインクを吸い上げる
苦痛は木霊する
目刺しのように並んだ戦死者
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