夜と雨の幕間劇/ただのみきや
 
夜の雨に置き去りにされた眼孔ふたつ
うらめしげに空を見上げている
空は覗きその身を映す 
今朝は薄曇りを着ている
一羽の烏が横切った 
互いの胸中を ほんの一瞬
実像と鏡像に引き裂かれて

日差しが水たまりを空へと還す
ひとみを潤ませて天を見上げる者もみな

骨になってわたしは
わたしの中の逃げ水を追いかける


雨が降っている
現実の雨が
街路樹の雨垂れに植え込みの水仙がかすかに揺れて
滲み出す
鳴らない鈴の声

感傷を塗りつぶす
タンポポ色の絵具を混ぜていた
雨よりも風よりも冷たい目の中で
太陽は酸い 
鳥たちを溺死させるほど


自我を
[次のページ]
戻る   Point(3)