湖の即興曲/リリー
出だけが甦ったりする
誰かが 何処かで目覚めて
遠く昔の女の事など考えながら
煙草くゆらせてもいよう
或いは
同じ様に扇風機まわる暗闇に覚めている
まだ見ぬ 女の事を思っているかも知れない
わけても 夏の嵐の夜
ふりすてるべき過去にひしがれたひとには
このうえなく優しいものだ。
*
北を見れば 湖上の大橋
空の高さに驚いているのか一羽の
停空飛翔する鳶
湖畔の並木
あの朝
一本の樹が、
そこだけが厳しい色をしていた
秋、半ば
あの一本の樹のあしたの紅葉では言えなくなってしまう
あなた
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