過去作二編(薔薇の美少年、百合の男)/本田憲嵩
 
 髪の毛の臭いリンスの香りや
女の打算的な哲学
そして、オレのナメクジの舌を這わせることも――
ああ オレは彼を さらに美しいものへと変身させよう
漆黒のゴシックロリータ風のドレスに
大きな赤い薔薇の髪飾り
それらを調達して
あの華奢な純白のからだを飾り立て
親の遺産から受け継いだ
この時代おくれの貴族的な部屋のなかで
かれのウィスパーボイスを永遠に聴こう




   百合の男


面とむかい合いながら 対照になるように
手の平と手の平を 重ね合わせながら 見つめ合う
鏡の中の 天使
無垢な黒水晶の瞳は物憂げに オレを見つめている


吐きだされ
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