過去作二編(薔薇の美少年、百合の男)/本田憲嵩
薔薇の美少年
かれの手よりも おおきなオレの手で
エスコートするように そのかたく骨ばった
小さな手をとって
かよわく息づく 白い茎である項(うなじ)に
優しい クチビルを這わせるオレ――
美少年の 青くさい髪の香り
色気にとぼしい ツヤのある百合色の肌
天然の薔薇(そうび)の頬と くちびる
無垢な 茶水晶の瞳
ああ オレは女の享楽的な性(さが)
これまでに 十分すぎるほど味わってきた
アイラインを曳いた 禍禍しい好意の誘いの目も
紅のルージュを塗った 毒毒しい 唇も
湯上がりの湿った 髪
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)