影の居場所/ただのみきや
影の記憶は顔同様黒く塗りつぶされて
ささめきすらなくしていた
あたたまった皮膚の汗のにおいも
すずめたちの影がみな持ち去って
空虚なおのれを持て余しつつ
夜をまとい眠りにつくが
眠りに落ちることはなく
ただ闇に溶けてどこまでも広がって
意識がうすめられるだけ
やがてまた朝が来て
地を這う煙
逃げ去る悪夢のように生成されると
すずめたちが鈴生りで身づくろいする
オンコの木の根元にしがみついては
道を挟んだ向こう側
こどもたちが訪れるのを待っている
*
石の中の鳥は幻を広げた
火のはごろものように青白く
相克の果て砂へと還り
その砂は旅人のたな
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