影の居場所/ただのみきや
 
海は薄く
曇り空
祖父の白目のよう

  *

憂鬱 ぬれたシャツ
窓ガラス 溺れる目
切れた唇から飛び降りた
ことばが膝に刺さって赤く咲いている

クジラがしゃべったみたい
カードはすべて裏返り
象徴ばかりが組体操をしている

時間には穴が開いている
つないだ手が卒塔婆に変わるのを
錬金術と呼んだ
目出度さを薬瓶に詰めて
過去へと流す
「拝啓 未来を堕胎したわたしへ」

  *

まだ死体のような春
濁った光の中を泳ぎ回る
こどもたちの影は
最初からひとつ多かった
その影が夕暮れマナを拾っている
こどもらの顔からあふれこぼれたものを

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