夜の弱さへ/由比良 倖
 
く運命のことなど。
(「見て、鉄くずがたくさん」)


もう、いつから泣いていないだろう?
いつから笑っていない?


「チェコの人が日本でこんにゃくを食べてたけれど、
 すごい変な味がしたって。
 何で醤油とか辛子みそとか付けないかなあ?」
と居間で適当なことを言って、それで家族と和んだ気になっている。
自室に戻っても、寂しさも悲しさも空しさも思い出せない。

毛布にくるまって、ヘッドホンの中で心のドアが開くのを待っている。
心なんていう時代遅れの言葉と、自分への再接続を信じてて、
目を瞑ると、秘やかな会話の可能性が、頭の奥で点滅するのを感じる。

音楽の中に
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