解答用紙/たなべ陽太郎
中学生の頃
僕は数学が嫌いだった
正解があることが嫌だったのだ
正解とはそれ以外のものを間違いとすることだ
鋭いナイフで切り取り
「はい、これが正しい答えです」と示されることに抵抗を感じたのだ
僕にとって何が正しい答えで何が間違いかはもっと曖昧なものであった
空欄のまま解答用紙を提出した
先生は黒板に解答を書き始め、チョークの擦れる音がした
僕は校舎の二階から机に肘をつき外を眺めていた
青い空に飛行機雲が伸びていった
翌日返却され、零点の解答用紙を受け取りポケットに入れた
放課後、遠回りをして川沿いの道を歩いた
逆方向の川上に向かった
深緑の山から蛇行して流れて
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