RAIN SONG。/田中宏輔
 

きょうは白、きょうは黒、と選んで
一面ごとに跳び越えてみたりした
幼い頃

雨の日、あの日
ぼくはママといっしょに
歩いてた

カサは一本しかなくって
アーケードが途切れるたびに
ママはぼくの腕をとって
歩いた

ぼくは、ぼくの腕をつかんだ
ママの指の感触がこそばったくて
こそばったくて、恥ずかしかったけど
だけど、とっても、うれしかった

ぼくを産んでくれたひとを追い出した
パパを憎むことよりも
血のつながりのない
ママを憎むほうが容易だった
ぼく
ぼくはパパの代わりにママを憎んでた
パパには憎しみを直接向けることをしないで
容易に憎むことの
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