記憶は決して温まることは無い/ホロウ・シカエルボク
湖に浸したあなたの肢が
いつかの母親と同じ色になるとき
水鳥は穏やかな声で鎮魂歌を歌う
水面のさざめきは最期の指先
朝日の差し込む、もう動かない台所
その食卓に
並べられた写真はもう
どれが誰かもわからないくらいに色褪せて
生きもののようにざらついた砂に埋もれようとしていた
わたしはそれ以前の墓標のように
そんな風景をいつまでも眺めていたのです
森の中にはいつでもヴェールのように薄い霧が立ち込めて
あなたはまといつくそれに身震いをするでしょう
濡れた空気の中では幾度わたしが叫ぼうとも
その声があなたまで届くことはないでしょう
わたしは熊のようにあたりを屠り
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)