記憶は決して温まることは無い/ホロウ・シカエルボク
屠りながら
いつか霧が晴れることを信じて待つでしょう
子守唄が正しく思い出せないのは、いつだって
眠ることが楽しかったころに聞かされたものだから
あのときのような目覚めはもう無いのだと
知りながら今夜も寝床に潜り込む
夢は何時だってこの世ではないところの話ばかりする
膝を折って繭のように座りましょう
思い出せないところはハミングで良いでしょう
心は在るのか無いのかわからないものだから
わたしたちはもっと無責任にそれを語るべきでしょう
白いペンキがあらかた剥げてしまった窓の下、生え放題の雑草の中で
蛇が子兎を絞め殺している
子兎の瞳はそれが何かもわからないまま
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