読むことのスリル──ひだかたけし小論(4)/朧月夜
 
、氏の詩が「生活詩」でもあり得る、という相貌が現れてくるのですが、今はその話題について吟味するところではありません。
 この詩の要点は、二人の出会いと交感が世界そのものへと昇華している点にあります。この詩のなかで現在性を感じさせる部分は、冒頭で引用した一節のみです。読者のために、あらためて書き直しますが、「二人寄り添い/昇った坂道/橙色に染まる/夕暮れに/奥まる時間を/二人して/ぐんぐんぐんぐん/遡行した」というのは、この詩における唯一の小説的な叙述であり、その後、詩人はすぐに詩の世界へと帰っていくことになります。どうにもならない定めがあった。しかし、それは過去のことでしょうか? 現在のことでし
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