読むことのスリル──ひだかたけし小論(4)/朧月夜
でしょうか? この二人の登場人物は、「世界」を通して初めて通じ合う。もし、「世界」がなかったならば、二人の交感もなかったことのように思われるのです。
人が人を愛するとき、あるいは人が人と触れ合うとき、それはどんな方法によってでしょうか。手を握ることでしょうか。キスすることでしょうか……。これ以上は言いますまいが、二人の人間が真に感情を共有するためには、その身体をも共有し合わなければなりません。この詩のなかに、「手をつなぐ」「キスをした」という言辞があっても、本当はおかしくないのです。世俗的な詩人であれば、むしろそうした表現を積極的に使うことでしょう。ですが、この定められた詩人、わたしが主張した
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