読むことのスリル──ひだかたけし小論(4)/朧月夜
 
射しに我は溶けて
  赤、白、黄と紫に、
  己が霊性に燃え盛る花。

  愛され愛し裏切り裏切られ、
  魂叫ぶ、花咲き乱れるこの界に
  〈ああ俺は、遂にお前自身を体験し切れなかった!〉
  既にいつも手遅れになりながら
  運ばれ運ぶ 愛、意志、刻印。

 この詩は、2016年4月の作であり、わたしの知る限り、氏の詩のなかでは初期の作品になります。そんな詩のなかで、「ああ俺は、遂にお前自身を体験し切れなかった!」と、詩人は叫ぶ。このような叫びは、実は「坂道」という作品のなかにも隠されているものです。いいえ、「坂道」という作品が2022年9月の作であることを思うとき、その詩
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