読むことのスリル──ひだかたけし小論(4)/朧月夜
 
が、彼は「何よりも生活を」ということを求めた詩人でした。そこに描かれる「過去の女性」の面影は、中原中也が愛した人の面影に他なりません。そこに、彼の純情もあり、抒情もあります。
 こんなふうに書いても、氏の詩の全体像は見えてこないでしょう。ですので、この「坂道」という詩の最後の部分から、もう一度引用してみたいと思います。
 
  僕らは何処に行くのだろう
  僕らは何処から来たのだろう

  運命の出逢いと永遠の別れ
  橙色に染まる坂道が
  今も仄かな熱を帯びる

「どこから来て、どこへ行くのか」という言葉は、19世紀から20世紀初頭にかけて活躍した画家である、ポール・ゴーギ
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