読むことのスリル──ひだかたけし小論(4)/朧月夜
 
したいように「生まれながらの詩人」にとっては、そうした表現では満足されない。このことは、詩人が単に過去の記憶を忘れている、といったこととは異なっているでしょう。世界は、「二人」を認識するとともに、「世界」それ自体を認識する。そう、せざるを得ない。その点にこの詩の悲しみ(または本質)があり、作者の悲しみがあります。
 あるいは、今述べたこととは一転して、この詩は明るい詩であるのかもしれません。かつて、良き思い出があった。それは眩いばかりに美しく、詩的言辞をもってしか表明できない。そのような解釈も可能です。わたしにとって親しい(よく知った)詩人である中原中也などは、過去の面影にすべての詩想を求めるよ
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