森(改訂)/ひだかたけし
葉影は優しく
黄金の光彩に
濃い斑の筋を引き
森の入り口に
伸びていた
目に見えないもの、
目に見えるもの、
それぞれ同等に
照らし出す
柔らかな日差しが
彼女の瞳の奥に
不思議に魅惑的な
光を宿させていた
雨の中を歩いて来た
緑の野原が広がり
その脇の路上に
松葉杖に片腕の老人が
雨に打たれぽつねんと
ひとり立っていた
その老人と
向き合いながら
緑の野原に
白い裸の少女が
やはり雨に打たれ
立っていた
対峙する、
鋭利な輝きを宿した
一対の瞳
と
何処までも闇に閉ざされた
一対の眼
、
時間は意味を
失っていた
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)