森(改訂)/ひだかたけし
彼女の瞳の
不思議に魅惑的な光を受け
森は奥深く広がっていた
見えないもの、
見えるもの、
両者がせめぎあい
くっきり濃密な
輪郭を形づくり
力動している
森の存在、
彼女の瞳は
その内面を
映し出していた
雨の中を歩いて来た
意識の窪みに
旧い記憶の光景と
新しい記憶の光景を
同時に並列させ見い出し
彼女の存在を
信じたり、
疑ったり、
迷い確信し迷い
歩いて来た
白い裸の少女と
(心の深い傷、肉の戯れ)
松葉杖に片腕の老人と
(戦場での殺し合い、飛び散る肉片)
波打つ光の残響、
雪原遠く聳える雪峰、
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