伊藤さん/ちぇりこ。
せいだけなのだろうか
待ち合わせの広場に
小刻みな歩行の駆動音が聞こえてくる
いつもより心なしか軽快に聞こえる
時折りの強風が伊藤さんの淡いピンクの
フレアスカートの裾を捲り上げる
あ球体関節
(セクハラ…です…)
ぼくと伊藤さんは川辺りの道を歩く
ぽつぽつと吐き出す気泡のように
ぎこちない会話を交わしながら
低空飛行の燕が
ぼくたちの頭上を掠めて行く
真夏の到来を促して行くように
(蝉…って変わってる…と思う)
また突拍子もない告白だ
夏の夕暮れどき陽が落ちると
暗い土の中から暗がりを求めて
這い出してきて羽化が始まる
(暗がり…から暗がりへ…なんて
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