ダンシング・フィンガーズ/まーつん
 
を急き立てる

とりあえず
枕元のギタースタンドから
テレキャスターのネックを掴んで
抱き寄せる

ペット禁止のアパートだから
猫は飼えない
アンプに繋がず生のまま
ユーチューブのチュートリアルを見ながら
エリオット・スミスをゆっくり鳴らしてみる

あの人のように、早くは弾けない
過負荷で脳の回路がショートしないように
メロディーをゆっくりと指先の神経に流し込む

美しいものに触れると
何故悲しくなるのだろう
それは多分、いつも彼等が
遠くにいるからだろう

その吐息が僕の頬に
感じられる時でさえ

左手の五本の指が、イ―マイナー・ナインスをたどた
[次のページ]
戻る   Point(0)