残像を踏み締めて/猫道
 
引っ越しを想像していたのはなぜか



イヤイヤ舞台に立つ俳優のようになっていた俺と

思い通りにならずにイラつく演出家のようになっていた彼女

俳優も演出家も経験あるからわかる

それはクソ芝居

しかしクソ芝居の現場はどんな芝居より面白いことも俺は知っている



声優の専門学校でクラス担任をしていた時

オーディション指導をするために

試しに複数のオーディションを受けてみた

名前も忘れたパワハラ気味のあの劇団では

事務所のガレージで座長のベンツを役者が洗う

今の俺はそいつらを笑えない



誰もが世界を征服したがる


[次のページ]
戻る   Point(1)