詩の日めくり 二〇二一年九月一日─三十一日/田中宏輔
もすぐに、そこの水が自分のほうに向かって流れていないことに気づいた。それだけでなく、夫人の思い出をはるか遠くまで運び去り、消し去ってしまいかねないように思われた。(…)その馬を見て、夫人は祖国の水を飲んでいる馬のことを思い浮かべ、同じ水だけれど、あちらの水とはずいぶんちがうのだろうと考えた。
(フェリスベルト・エルナンデス『水に浮かんだ家』平田 渡訳)
二〇二一年九月三日 「断章」
彼、あらゆる精神の中で然(しか)りと肯定するこの精神は、一語を語るごとに矛盾している。彼の中ではあらゆる対立が一つの新しい統一へ向けて結び合わされている。
(ニーチェ『この人を見よ』なぜ
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