詩の日めくり 二〇二一年六月一日─三十一日/田中宏輔
フィリップ・ホセ・ファーマーの短篇集『奇妙な関係』の2作目は、「娘」1作目の「母」の続篇だ。ボードレールという惑星の土着生物、1作目の主人公の青年が養われていた生物の子どもの話だ。土着生物は雌で、子どもも雌のみだ。他の動く生命体を雄とする。この「娘」では、特別な動く生命体であった父親、1作目の主人公の話をよく聞いていた娘の話だ。この土着の生物は、いわば巨大なカタツムリのようなもので、雌だけの生き物で、自分の殻のなかは空洞で、他の動く生物を捕らえて、その殻のなかで、受精帯に牙か爪で傷をつけてもらって子どもを孕むというわけ。この土着の生物は殻をつくると動けなくなるので、匂いなどで動く生き物をおびき寄
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