そしてまた、うた歌いの夜は、更けゆく/秋葉竹
 
ないから手をのばす
無垢な聖性だけに憧れる


凍ってしまった海を渡って
泣くのを我慢して
さみしい人たちが
しずかに
ひとりずつ
やって来る
彼女の気ままに作った
でたらめな星座をたよりに
いつも悲しみを瞳にたたえて


なぜ連れていってくれないのかと
恨みの言葉はいまも
あたしの中の無垢な信号として
赤色点滅を灯しつづけるものだから
それを消し去るまえに
居心地の良い自己欺瞞を
消さなければいけないのに

日常に溺れるあたしには
いまを生きることしかできない

あたしは
彼女を知ったのに。
きよらかに灯る聖火の孤独を知ったのに。


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