詩の日めくり 二〇二〇年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
言寺の近くに引っ越したのだが、3年生になると、またもとの祇園に戻って、中学も元の弥栄中学校に戻ったのだけれど、醍醐中学のときの思い出はいろいろある。そのひとつに、大きな家に住んでるお金持ちの家の子が、ふとった色黒のかわいらしい男の子だったけれど、制服の肩のところが破けてて、それを繕った跡がしっかり残ったものを着ていたことかな。お金持ちなら、さらのものを買えばいいのになあと思ったことを憶えている。ぼくが授業中にしんどそうにしていると、だいじょうぶかと声をかけてきてくれて、先生にことわって、保健室まで連れて行ってくれたことを思い出す。気のやさしい男の子だった。いまごろどうしてるだろうか。



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